海外ATMの現地手数料は誰が負担する?Visa・Mastercard・JCBの違い

海外ATM利用時の現地ATM手数料は、カードの国際ブランド(Visa、Mastercard、JCB)によって取り扱いが異なります。パススルーとネットワーク負担の違い、誤解の原因と対策を解説します。

現地ATM手数料とは何か

海外ATMで現地通貨を引き出す際、ATMを設置している現地銀行や運営会社が「現地ATM手数料」を課します。例えばタイではKasikornbankやKrungsriで1回あたり220 THB(約1,000円)、ベトナムではVietcombankで22,000 VND(約130円)など、国・銀行によって金額が異なります。

この手数料は「カード発行会社の手数料(220円など)」とは別のものです。海外ATM利用時のコストは以下の3層構造になります。

  • 現地ATM手数料:ATM運営者が課す固定手数料(例:タイ 220 THB、ベトナム 22,000 VND)
  • カード側ATM手数料:カード発行会社が課す手数料(例:110円〜220円)
  • キャッシング利息:クレジットカードのキャッシング金利(例:年率18.0%の日割り)

この記事では、第1層「現地ATM手数料」を誰が負担するかに焦点を当てます。結論から言うと、これはカードの国際ブランド(Visa、Mastercard、JCB)によって決まります。

国際ブランドによる取り扱いの違い

現地ATM手数料を「誰が負担するか」は、カードの国際ブランドによって異なります。重要なのは、カード発行会社(エポス、楽天、三井住友など)ではなく、カードに刻印されているブランドロゴ(Visa、Mastercard、JCB)で決まるということです。

Visa — パススルー(利用者負担)

Visaブランドのカードで海外ATMを利用した場合、現地ATMが手数料を元金に上乗せして送信すると、その金額がそのまま利用者の請求に含まれます。これを「パススルー」と呼びます。

日本のVisaブランドカードはすべてパススルーです。エポスカード、楽天カード、三井住友カード、Sony Bank WALLET、Amazon Mastercard(Mastercardだが同様)など、発行会社に関わらずVisa/Mastercardブランドなら現地ATM手数料は利用者負担となります。

つまり、「Visaカードだから現地ATM手数料が無料になる」ということはありません。現地ATMが220 THBの手数料を課せば、引き出し金額に220 THBが上乗せされて請求されます。

Mastercard — パススルー(利用者負担)

MastercardもVisaと同様にパススルーです。Amazon Mastercard、Revolutなど、Mastercardブランドのカードで海外ATMを利用した場合、現地ATM手数料は利用者負担となります。VisaとMastercardの間で現地ATM手数料の扱いに違いはありません。

JCB — ネットワーク負担(ABSORBED)

JCBは公式に「海外ATM利用時に現地金融機関が請求する手数料は、JCBが負担します」と規約で明記しています。つまり、JCBブランドのカードでは現地ATM手数料が利用者の請求に含まれません。これはJCB独自の規約であり、VisaやMastercardには適用されません。

ただし、JCBが使えるATMはVisa/Mastercardに比べて少ないため、渡航先によってはJCBカードだけでは対応できない場合があります。東南アジアの主要都市ではJCB対応ATMが比較的多いですが、欧米や一部の国では限定的です。

なぜ「現地ATM手数料無料」という誤解が広がったのか

ネット上には「海外キャッシングなら現地ATM手数料が無料」「エポスカードは現地手数料がかからない」といった記事が多数存在します。これには3つの原因があります。

原因1:過去のVisaルールの変更

数年前まで、Visaの海外キャッシングでは現地ATM手数料が元金に含まれていても、請求時に切り捨てられるケースがありました。この時代の情報を元にした記事が「現地手数料無料」と書かれています。しかし現在はVisaのルールが変更され、現地ATMが送信した金額(元金+現地手数料)がそのまま請求されます。

これはVisaだけでなくMastercardにも当てはまります。現在のVisa/Mastercardブランドのカードでは、現地ATM手数料は確実に利用者負担となります。

原因2:JCBの規約との混同

JCBは現地ATM手数料を負担することが公式に明記されています。この情報が「クレジットカードなら現地手数料無料」と一般化され、Visaブランドのカード(エポスカード、楽天カードなど)にも適用されるという誤解が広がりました。「クレジットカード = 現地手数料無料」は間違いであり、正しくは「JCBブランドのカード = 現地手数料JCB負担」です。

原因3:現地ATM手数料の見えにくさ

現地ATM手数料は、引き出し金額に上乗せされて一括で請求されるため、請求明細を見ても「いくらが現地手数料で、いくらが引き出し元金か」が分かりにくい場合があります。特にVisaの場合、現地ATMが送信する金額に手数料が含まれているため、カード会社の請求明細には「現地ATM手数料」という項目が表示されず、元金として一括表示されます。この見えにくさが「手数料がかかっていない」という誤解を生んでいます。

Visa・Mastercardカードの現地ATM手数料を実例で確認

タイで10,000 THBを引き出した場合の実例で比較します。為替レートは1 THB = 4.3 JPYとします。

Visa/Mastercardカード(エポス、楽天、三井住友など)

  • 引き出し金額:10,000 THB
  • 現地ATM手数料:220 THB(パススルー — 利用者負担)
  • ATMから送信される金額:10,220 THB
  • 日本円請求額:10,220 × 4.3 = 43,946円
  • カード側ATM手数料:220円(1万円超の場合)
  • 合計請求:44,166円 + 利息

このように、現地ATM手数料220 THB(約946円)は引き出し金額に含まれて請求されます。請求明細には「10,220 THB分の引き出し」として表示されるため、220 THBが手数料だと気づきにくい構造です。

JCBカード(JCBカード W/Sなど)

  • 引き出し金額:10,000 THB
  • 現地ATM手数料:220 THB(JCBが負担 — 利用者請求なし)
  • ATMから送信される金額:10,220 THB
  • JCBが負担する手数料:220 THB
  • 日本円請求額:10,000 × 4.3 = 43,000円
  • カード側ATM手数料:220円(1万円超の場合)
  • 合計請求:43,220円 + 利息

JCBの場合、現地ATMは同じく220 THBを課しますが、JCBがその分を負担するため、利用者の請求には含まれません。差額は約946円です。

コストを最小化する戦略

1. 繰上返済で利息を最小化

Visa/Mastercardブランドのクレジットカード(エポス、楽天、三井住友など)のキャッシング利息は年率18.0%ですが、これは日割り計算です。引き出し後すぐにPay-easy繰上返済をすれば、利息を数円〜数十円に抑えられます。詳しい手順は繰上返済ガイドを参照してください。

2. 現地手数料の安いATMを探す

国によっては現地ATM手数料が安い・無料のATMが存在します。例えばタイのAEON ATMは1回あたり150 THBと他行(220 THB)より安く、ベトナムの一部ATMは手数料がかかりません。渡航先のATM手数料を事前に確認しましょう。

3. JCBカードの活用

JCBブランドのカードを使えば、現地ATM手数料をJCBが負担します。ただしJCBが使えるATMはVisa/Mastercardに比べて少ないため、渡航先で事前に確認が必要です。JCBカードをサブカードとして持っておくと、JCB対応ATMがある場合は現地手数料を節約できます。

4. 1回あたりの引き出し額を大きくする

現地ATM手数料は1回あたりの固定額です。引き出し回数を減らし、1回あたりの金額を大きくすれば、手数料の割合を下げられます。例えばタイで1回10,000 THBを引き出す場合、手数料は220 THB(2.2%)ですが、5,000 THBを2回引き出すと440 THB(4.4%)になります。

5. デビットカード・プリペイドカードの検討

WiseやRevolutなどのデビットカードは利息がかからず、為替マージンも低いです。ただし現地ATM手数料はVisa/Mastercardと同様にパススルー(利用者負担)なので、現地ATM手数料そのものを回避したい場合はJCBカードが有利です。

ブランド別比較表

項目VisaカードMastercardカードJCBカードWise(デビット)
現地ATM手数料利用者負担(パススルー)利用者負担(パススルー)JCBが負担(ABSORBED)利用者負担
代表例エポス、楽天、三井住友Amazon、RevolutJCBカード W/SWise Standard
カード側ATM手数料110〜220円110〜220円110〜220円月2回無料枠あり
利息年率18.0%(日割り)年率18.0%(日割り)年率18.0%(日割り)なし(デビット)
為替マージン2〜4%(カードによる)2〜4%(カードによる)1.60%(JCB W/S)0%
対応ATMの多さ多い(PLUS網)多い(Cirrus網)限定的(JCB加盟ATMのみ)多い(PLUS網)

検証・監修: akifumi(コンテンツ責任者・データ検証)

詳細は著者プロフィールを参照してください。